ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.5

本日は、「マネジメント 課題、責任、実践 上」第2章からドラッカーのマネジメント観について紹介します。

マネジメントとは何でしょうか?組織のマネージャーの役割から「管理する」ようにイメージするかもしれません。しかし、ドラッカーはマネジメントを個人の能力やスキル、職務というレベルでなく、もっと広い意味で捉えています。

ドラッカーは、

マネジメントは、仕事を組織し、働く人たちに組織が目標とする成果をあげさせる。

と述べています。

ドラッカーは、マネジメントが広く社会的な機能であると考えていました。ドラッカーが生きたヨーロッパにおける戦乱や社会体制の急激な変化の中で、人々が人間らしく生活していくために「自由で機能する社会」を目指していました。その社会を支えるのが組織であり、組織がその目的を果たすための機能としてマネジメントを必要としたのです。単に組織や企業を管理するための手法でなく、広く社会のために成果を出すための機関としてマネジメントを定めたのです。

ドラッカーは、

マネジメントとは、課題によって規定される客観的な機能である。しかし、同時に、マネジメントとは社会の価値、伝統、習慣によって規定される文化的な存在である。

とも述べています。

ドラッカーは、マネジメントを通じて社会、組織、人間が良好な関係を維持しつづけられる潤滑油と考えていたのです。このように考えるとソーシャルビジネスの根本にマネジメントを置くことはとても大切だと思います。「論語と算盤」で有名な渋沢栄一も、企業と国益、企業と道徳のバランスを大事に考えていました。社会とのバランスを考える思考は、ドラッカーと通じるところがあります。ドラッカーは、「マネジメント」の中で渋沢栄一を「マネジメントの必要性を世界で最初に理解した人」、「明治期の日本の経済的な躍進は、渋沢の経営思想と行動力による」と述べています。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「マネジメント 課題、責任、実践 上」、ダイヤモンド社、2008年12月