ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.6

本日は、「マネジメント 課題、責任、実践 上」第3章「マネジメントへの挑戦」について紹介します。

第3章は、冒頭のイントロダクションの最終章です。ドラッカーのマネジメントについての想いが詰まった内容です。ドラッカーは、経済人から産業人、そして知識労働者という人間の変遷を見つめていた社会生態学者です。社会に求められる人間像として、知識が大切であることは、今の社会では誰しも同感することだと思います。マネジメントという考え方についても、新しい知識としてドラッカーが求めたものです。マネジメントによって、我々は組織の生産性だけでなく自由で機能する社会を享受することができるのです。組織として知識労働者の生産性をあげて地域社会に貢献することで、社会と組織、関わっている人間が成長できるのです。ドラッカーの書籍を読む楽しさは、絶えず社会と組織、自分の行動という多角的な視点から見つめ直す機会を与えてくれることだと感じています。組織の人材育成やマネジメントの問題を解消しようとしてミクロ的な視点に注意して読み進めることも楽しいでしょう。探していた回答は、企業の活動に留まらず、地域社会との共生、社会との調和など、多様な広がりで関係していることに気付かされます。

ドラッカーはマネジメントについて、

マネジメントの役割は、本業で成果をあげることであり、生産的な仕事によって働く人たちが成果をあげるようにすることであり、自らの事業によるインパクトを処理しつつ社会的な貢献を行うことである。

と述べています。

自社の利益を追求すること、顧客満足を達成すること、社会貢献すること、そして自己実現を果たすこと。

これらは、別々に行われるのでなく一連の行動として関連しているのです。自身の行動を見つめ直し、この行動の持つ意味と意義を見極められれば、日々の行動がきっと充実すると思います。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「マネジメント 課題、責任、実践 上」、ダイヤモンド社、2008年12月

ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.5

本日は、「マネジメント 課題、責任、実践 上」第2章からドラッカーのマネジメント観について紹介します。

マネジメントとは何でしょうか?組織のマネージャーの役割から「管理する」ようにイメージするかもしれません。しかし、ドラッカーはマネジメントを個人の能力やスキル、職務というレベルでなく、もっと広い意味で捉えています。

ドラッカーは、

マネジメントは、仕事を組織し、働く人たちに組織が目標とする成果をあげさせる。

と述べています。

ドラッカーは、マネジメントが広く社会的な機能であると考えていました。ドラッカーが生きたヨーロッパにおける戦乱や社会体制の急激な変化の中で、人々が人間らしく生活していくために「自由で機能する社会」を目指していました。その社会を支えるのが組織であり、組織がその目的を果たすための機能としてマネジメントを必要としたのです。単に組織や企業を管理するための手法でなく、広く社会のために成果を出すための機関としてマネジメントを定めたのです。

ドラッカーは、

マネジメントとは、課題によって規定される客観的な機能である。しかし、同時に、マネジメントとは社会の価値、伝統、習慣によって規定される文化的な存在である。

とも述べています。

ドラッカーは、マネジメントを通じて社会、組織、人間が良好な関係を維持しつづけられる潤滑油と考えていたのです。このように考えるとソーシャルビジネスの根本にマネジメントを置くことはとても大切だと思います。「論語と算盤」で有名な渋沢栄一も、企業と国益、企業と道徳のバランスを大事に考えていました。社会とのバランスを考える思考は、ドラッカーと通じるところがあります。ドラッカーは、「マネジメント」の中で渋沢栄一を「マネジメントの必要性を世界で最初に理解した人」、「明治期の日本の経済的な躍進は、渋沢の経営思想と行動力による」と述べています。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「マネジメント 課題、責任、実践 上」、ダイヤモンド社、2008年12月

ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.4

本日は、「マネジメント 課題、責任、実践 上」第1章からマネジメントの背景について紹介します。

 

本章では、マネジメントを語る前提として私たちが生活している社会について述べています。近代社会への発展の中で我々が関わる社会が大きく変わってきました。かつての社会観は、私たちが社会として認識しているのは「政府」と「家族」でした。私たちは日常生活の中で「家族」のために生活していました。しかしながら、先進社会では社会的機能が高度化し、「政府」以外の社会として企業などのさまざまな組織が社会を支えています。私たちは、社会を支えるさまざまな組織のために働いています。各組織にはさまざまな役割が課されており、所属する組織に従って私たちは「地位」と「役割」を与えられ生活することになります。各組織は協力し、時には競合し社会を機能させることになります。このような多元社会の中で組織が巨大化し、社会的影響力が大きくなるにつれ組織の責任がより重要視されるようになりました。各組織が適切に責任を果たすためにマネジメントが必要となるのです。

ドラッカーは、

 「マネジメントとは、成果に対する責任に由来する客観的な機能である。

 「マネジメントの本質は、富でも地位でもなく、責任である。

と述べています。

マネジメントの本質を学ぶことは現代社会で生きていくために大切なことです。

次回以降の、ドラッカーのマネジメントについて紹介します。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「マネジメント 課題、責任、実践 上」、ダイヤモンド社、2008年12月

ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.3

本日は、「マネジメント 課題、責任、実践 上」まえがきからソーシャルビジネスに求められるマネジメントについて紹介します。

ドラッカーは、マネジメントを発明した背景として、専制主義社会から自由主義社会に向けて、権威や恐怖による強制的な統制から、自主的な責任によるマネジメントにより成果をあげることを強調しています。社会の機能として組織が存在しますが、その組織の機関となるのがマネジメントであり、社会を機能させることが役割となります。つまり、マネジメントは個々の企業の存続だけを目的として活用されるのでなく、広く社会のために機能させるべきものなのです。社会的課題を解消することがソーシャルビジネスの目的ですが、社会を機能させるためのマネジメントは正にソーシャルビジネスの機能といえるのです。

ドラッカーは、

「マネジメントは体系、文化である。数式ではない。社会に根づくべき社会のための機能である。」

と述べています。

ドラッカーのマネジメントを通じて、ソーシャルビジネスの推進に努めましょう。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「マネジメント 課題、責任、実践 上」、ダイヤモンド社、2008年12月

ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.2

本日は、ドラッカーの視点からソーシャルビジネスを考える際の基軸について考えてみたいと思います。ドラッカーの思想から考えるとしても具体的には、どの様に考えればわかり易いでしょうか。先日紹介したドラッカーとソーシャルビジネス経営戦略研究会の様にドラッカーの著作から考えるのがスタンダードでしょうか。ソーシャルビジネスを起業する経営者として考えた場合、経営者の条件、プロフェッショナルの条件、チェンジ・リーダーの条件などが考えられます、ソーシャルビジネスのイノベーションとして考えた場合、創造する経営者、イノベーターの条件などが考えられます。ソーシャルビジネスのマネジメントの場合、現代の経営、マネジメントなどが考えられます。ソーシャルビジネスが扱う社会課題の解消として考えた場合、非営利組織の経営などが考えられます。また、ドラッカー思想の根本である社会の在り方(自由で機能する社会)として考えた場合、初期三部作 経済人の終わり、産業人の未来、企業とは何かなどが考えられます。更に、ドラッカーの社会観として、多元社会や、ドラッカーのマネジメントツールであるマネジメント・スコアカードなど膨大な視点が考えられます。私は、ドラッカーの社会観の根本は、自由で機能する社会を実現するためのマネジメントの活用であると考えています。マネジメントを活用することで社会貢献を行うとともに、自組織による社会的インパクトを解消することで自由で機能する社会を構築することがドラッカーの目指す社会です。そのような考え方からすればドラッカーの全ての書籍がソーシャルビジネスに通じると思います。そうではありますが、今回はやはり「マネジメント」を取り上げたいと思います。次回からドラッカーの「マネジメント」からソーシャルビジネスに必要な教えを紐解いていきたいと思います。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「マネジメント 課題、責任、実践 上」、ダイヤモンド社、2008年12月

倫理は新型コロナウイルスに勝るか?

緊急事態宣言が出てからも猛威を振るっている新型コロナ。感染から発症までの潜伏期間を考えるとソーシャルディスタンスの効果が出るまでには2週間程度の期間がかかると言われている。グローバル化により世界的な人や物が行き来する現代社会では、世界的な感染対策が求められている。しかしながら、現状では各国の対応をバラバラで統一的な対応が行われていない。この緊急事態に際して、我々はどの様な行動を選択すべきでしょうか。世界的な問題ですが、実はローカルなレベルでも同様の問題があります。「コモンズの悲劇(共有地の悲劇)」と言われている問題です。自由にアクセスできる共有地がフリーアクセスのために荒れたり、資源が枯渇したりする現象です。この問題の対策として、行政による統制や個人の所有による管理により問題を解消する方法。それから、地域社会による自主的な管理としてローカルコモンズによる管理が効果を示したとの報告もあります。新型コロナも一部の国が行っている強制的な制限、国を越えた世界的強制力や超法規的な措置をとることが有効でしょうか。この考え方は世界を一つの秩序の下に制約するという全体主義的な思考ですが、現実的ではありません。国や宗教、民族間の対立は歴史的現実でコスモポリタン的な思想は現実からは隔たりがあるように感じます。各国が独自の対応を取りつつ世界として一定の方向性を目指す多元主義的な思考で解決すべきなのでしょうか。外圧的な制約と共に我々が考えなければならないのは、人間が持つ倫理観や道徳観といわれる共通意識の存在です。個々人の倫理観や道徳観は個人的な素養でそれを社会のルールとして用いることは難しいと思われますが、人類が最終的に破滅に向かうのか共存共栄の道に進めるのか。この選択は、全人類は持つ共通認識が自身のために他者を排斥するか共存共栄を目指すのか本能的な選択の関わっていると思います。外圧的な制約も、所詮は個々人が様々な制約の下で構築してきたものです。今回の世界的な危機について、自身の心の声に耳を傾け、自身が行うべき行動を再考すべき時だと思います。

ドラッカーとソーシャルビジネス マネジメント編Vol.1

本日は、ソーシャルビジネスについての知見を広げるための試みとして、外の世界からソーシャルビジネスを問うてみたいと思います。外からと言っても漠然としていますので、先ずはマネジメントの父と言われたドラッカーの思想からソーシャルビジネスを考えてみたいと思います。早速、インターネットでソーシャルビジネスとドラッカーを検索したところ、「ドラッカーとソーシャルビジネス経営戦略研究会」というそのままズバリの研究会があることに気付きました。既にソーシャルビジネスとドラッカー思想を結び付けて研究している団体があることに驚きました。この研究会では、ドラッカーの著書を用いて研究を行っている様です。私がドラッカーに注目したのは、彼の思想的背景もそうですが、ドラッカー学会マネジメント研究会で得た知見のアウトプットを兼ねてのことです。今までの企業人としての実務経験や研究者としての研究活動を通じて得た知見を少しずつ共有できたらと思います。

 

一般社団法人 SINka 社会起業家支援ネットワーク九州・アジア

http://www.sinkweb.net/index.html

「九州の社会起業家社会起業家創出を支援するためのネットワークで、社会起業家になりたい、社会起業家を応援したい、社会的企業を経営したいという人々の集まりとしてH18年4月に任意団体として設立。(HP団体概要より)」また、九州経済産業局「九州ソーシャルビジネス促進協議会Sofi」の福岡での事務局なども手掛けている。

 

ドラッカーとソーシャルビジネス経営戦略研究会

http://www.sinkweb.net/project/010/

ドラッカー「経営者の条件」を参考図書としてソーシャルビジネスを考える読書会の様な活動も実施している。

 

P.F.ドラッカー(著)、上田惇生(訳)、「経営者の条件」、ダイヤモンド社、2006年11月