「テセウスの船」とアイデンティティ

今日は、TBS系「日曜劇場」「テセウスの船」を観て考えたことを共有したいと思います。

評判も良く、観られた方も多いと思います。平均視聴率は13.4%、最終は19.6%と好評でした。

参考情報

TBS系「日曜劇場」「テセウスの船」 Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%BB%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%88%B9_(%E6%BC%AB%E7%94%BB)

テセウスの船」 Wikipedia

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%82%BB%E3%82%A6%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%88%B9

上記参考情報や実際の番組を観て私が考えたことは以下の2点です。

①普段何気なく用いている「同じ」という意味

②意思決定すべき時間

先ずは、前提となる「テセウスの船」という用語につて簡単に紹介します。「テセウスの船」とは、テセウスパラドックスともいわれています。ある物体の全ての部品が置き換えられたら同じものと言えるのかという、アイデンティティ(自己同一性)に関する命題です。同様の例として ヘラクレスの川やおじいさんの古い斧なども有名です。

①普段何気なく用いている「同じ」という意味について、

私たちは、普段何気なく「いつも同じ電車で出勤しています」や「いつものをください」と言うことがありますが、この「いつも」は「同じ」ことでしょうか?

「いつも同じ電車で出勤しています」と言っても、発車時間が同じことを意味する場合が多く、同じ車輌でしょうか、運転手や乗客、乗車している場所は同じでしょうか。また、「いつものをください」と言っても、材料や作る人、使用する器具は同じでしょうか。

「貴方の考え方と同じです」という言い方も良く聞きますが、「総論賛成各論反対」となることも多いのが現実です。同じとは個人が主観的に感じ、認識、判断されるものであり、無意識や社会的環境から大きな影響も受けると考えます。つまり、我々の認識は、3つの領域「①意識の領域(五感的な感性として認識される領域、個人の志向や関心、個人的な知見など)」、「②無意識(暗黙知)の領域(過去の経験の蓄積、トラウマ 意識的に活用できない領域)」、「③社会的文脈(社会的な要因としての普遍的な真理、自然科学の法則、社会制度など)」に左右され、他者と同じ認識を得ることは難しいのではないかと思います。形而上学的な考えかもしれませんが、客観的な事実として社会を捉えても人間が主観的に受ける感覚は様々です。現代社会で求められている多様性やダイバーシティーという考え方は、多元社会や構造主義など目に見えない社会や制度、思考なども含めてお互いを認め合い、共生することを目指す社会観だと思います。

②意思決定すべき時間について、

テセウスの船」は、主人公が過去に戻り、未来を変えるという現実離れした内容です。人生は過去の意思決定の積み重ねです。過去に最適な意思決定ができない後悔は誰にでもあると思います。出来れば過去のあの出来事に戻ってやり直したいと思うこともあるでしょう。その時にしかできない意思決定を将来に遅らせることはできないのでしょうか。ビジネスの世界には、その手法があります。通常、新規のプロジェクトを評価する場合、正味現在価値法(NPV)として将来の価値を現在価値に変換して最適なプロジェクトを選択します。その意思決定を将来に遅らせる方法として、ディシジョン・ツリーを活用したリアルオプションという手法があります。後日ある状況が明らかになった時点で改めて柔軟に意思決定をすることで最適な未来を選択する手法です。ここで注意すべきは、判断の先送りではなく、決定すべき事項と状況により将来決定できる事項を明確に分けることです。

 ※今やすべきことは今やる! … いまやらないと明日では間に合わない。

 ※明日やれることは今やらない! … 明日できることは明日の状況で判断すべき。

現代社会でも意思決定を遅らせたり、別の方法を提案したりしているビジネスがあります。誰しも失敗したくない結婚(法律婚)については、事実婚(海外では社会的に認められている国もあります)、内縁や同棲(国内では社会的制約も多く批判的です)です。就職については、インターンシップ、アルバイトを通じてミスマッチを防止できます。具体的なビジネスモデルとしては、購入前にお試し期間や初回割引の設定、製品やサービスを購入するという視点ではなく、期間などを定めて使用するというサブスクリプションというモデルなどです。

捉え難い個人の主観や社会的な価値観の変遷を捉えることは、ソーシャルビジネスの領域にも不可欠な要素となるでしょうか。経済市場だけでは語れないソーシャルビジネスであればこそ、社会的文脈を考慮したミッション、ビジョンが求められます。